この記事は、人権の専門家ではない宮崎の一個人事業主・ゆうとりが、AIと最新の情報を頼りに学びながら書いています。経済でも健康でも幸福でもつながっている「人権」というテーマを、宮崎から一緒に考えていくための連載です。
数字だけ見れば、宮崎は「厳しい県」
宮崎県の所得水準について調べた数字を並べてみます。
令和3年度の県民経済計算によると、宮崎県の1人当たり県民所得は240万9千円で、全国順位は46位でした。
県内総生産(名目)も全国39位と、決して大きな経済規模とは言えません。
給与水準を扱う各種の統計でも、宮崎県は全国平均を下回る職種が少なくありません。
こうした数字だけを見れば、「宮崎は経済的に厳しい県」という印象を持たれても不思議ではありません。
実際、県外の人にこの数字を見せると、驚かれるかもしれません。
もしあなたが「暮らす場所を選ぶとしたら、所得水準の高さと、心から安心できる暮らしやすさ、どちらを優先しますか」と聞かれたら、どう答えるでしょうか。
多くの人にとって、この問いへの答えは、思っているより簡単ではないはずです。
それでも、幸福度は全国トップクラス
ところが、視点を変えると全く違う顔が見えてきます。
ブランド総合研究所が実施した「地域版SDGs調査」では、宮崎県の幸福度が72.4点で全国1位という結果が出ました。
同じ調査では、宮崎市の家賃(3.3㎡あたり3,789円)が全国で13番目に安く、持ち家率は65.7%と全国平均を上回るという結果も示されています。人口1人当たりの都市公園面積も、全国5位(18.20㎡/人)と上位に入っています。
物価の面でも、総務省が公表している消費者物価地域差指数(2024年実績)を見ると、宮崎県は97.0で、全国平均(100)を下回っています。ここ数年は鹿児島県や群馬県などと僅差で最下位クラスの順位が入れ替わっていますが、全国的に見て物価の低い県であることに変わりはありません。
つまり、「収入の額」ではなく、「収入に対して何にどれだけお金がかかるか」「暮らしにどれだけゆとりがあるか」という実感の部分で、宮崎は大きな強みを持っているということです。
低い所得と低い物価、狭くない住まいと広い公園。この組み合わせが、数字上の所得の低さを補って余りある暮らしやすさを生んでいるのではないでしょうか。
宮崎には、自分のスキルを活かせる仕事がない、という理由で、37年間、県外で暮らしてきました。2022年にUターンしてきましたが、コロナ禍以降、リモートワークで働くスタイルが浸透したおかげで、それまでの仕事がいまでも継続できています。
気候が温暖、人がいい、物価の安さ、自然へのアクセスが容易、静かな住環境、買い物の便利さ。人の少なさ(笑)。
都会のような刺激は少なく、また公共の交通機関が極めて不便で、移動手段に車が必要、といたマイナス要因はありますが、全体的に見れば、宮崎の暮らしの良さを実感しています。
なぜ「幸福」という尺度が大事なのか
このシリーズでは人権を経済・健康・幸福・教育・持続可能性という5つの尺度から考えていますが、宮崎にとって最も強みを発揮できるのが、この「幸福」の軸だと感じています。
人権が守られているという実感は、経済的な豊かさとは別の回路で、人の幸福感に直結します。差別されない、排除されない、ありのままの自分でいられる、という安心感そのものが、幸福の土台になるからです。逆に言えば、どれだけ所得水準が高くても、差別や排除に晒される不安を抱えたまま暮らす社会では、本当の意味での幸福は育ちにくいとも言えます。
あなた自身は、「幸せかどうか」を測るとき、収入の金額を思い浮かべるでしょうか。それとも、家族や友人との関係、安心して過ごせる時間の長さを思い浮かべるでしょうか。多くの人にとって、後者の方が実感に近いのではないかと思います。
世界と日本、両方に前例がある
経済成長だけを追いかけるのではなく、幸福そのものを政策の中心に据える、という発想は、実は世界的にも新しいものではありません。
ブータン王国は1972年、当時の国王の提唱によって「国民総幸福量(GNH)」という考え方を打ち出しました。これは「国民の幸福は経済成長よりも重要である」という考えのもと、持続可能で公平な社会経済開発、環境保護、文化の推進、良い統治という4つの柱から国の豊かさを測ろうとするものです。
GDPという単一の物差しだけでは見えない豊かさを、国家運営の中心に据えた先駆的な事例として、今も世界中から注目されています。
もっとも、GNHという理念があるからといって、ブータンのすべてがうまくいっているわけではありません。近年は若者の失業率が28%に達し、より良い機会を求めてオーストラリアなどへ移住する若者が急増しているとも報じられています。理念としての幸福度と、実際の暮らしの厳しさが必ずしも一致しない、という現実も、正直に見ておく必要があると感じています。
日本国内にも、実は似た発想の政策がありました。2009年、当時の政権が策定した「新成長戦略基本方針」には、数値としての経済成長率や量的拡大を追い求める従来型の成長戦略とは一線を画し、生活者が本質的に求めているのは幸福度の向上であるという考え方が明記されています。
その後の政策としては十分に定着したとは言えませんが、「経済成長そのものが目的ではなく、幸福が目的である」という視点は、日本国内でも一度、政策の中心に据えられた経緯があるのです。
宮崎は、まさにこの新しいものさしの上で、既に強みを発揮できている土地なのかもしれません。
OECD(経済協力開発機構)も、GDPだけでは測れない豊かさを可視化するための「より良い暮らし指標(Better Life Index)」を提唱しており、住居・所得・雇用・共同体・教育・環境・市民参加・健康・生活満足度・安全・ワークライフバランスという11分野から国や地域の豊かさを多面的に捉えようとしています。
所得という単一の物差しだけで地域の価値を測る時代は、既に国際的にも見直されつつあるのです。
AIによって、これまで人がやってきた仕事のかたちが大きく変わろうとしているいま、この視点はさらに大事になっていくと感じています。AIに任せられる作業が増えるほど、「何にどれだけ稼いだか」という物差しだけでは、自分の価値も、暮らしの豊かさも測りきれなくなっていくはずだからです。
いきがいカフェの視点:「生きがい」と「幸福」はつながっている
いきがいカフェ協会が大切にしている「生きがいをもつこと」という考え方は、この幸福度の高さと深く結びついていると感じています。
お金や地位という一つの物差しだけでなく、自分なりの生きがいを持てているかどうかが、実感としての幸福を左右するからです。
宮崎の幸福度の高さは、決して偶然ではなく、思いやりのある県民性や、自然と近い暮らし、そして一人ひとりが自分らしくいられる余白が、じわじわと積み重なった結果なのではないかと考えています。
あなたの「幸福の物差し」も聞かせてください
経済指標だけでは見えない豊かさを、これからも数字と実感の両面から掘り下げていきたいと思います。
ぼく自身、これから先の時代を生きていく子どもたちのために、何かできることをしたいという思いがあります。半導体業界からリザストのトレーナー、そしていきがいカフェ協会の運営へと歩んできたこれまでのキャリアを活かして、個人事業主として働く方々の所得向上に取り組んでいきたいと考えています。
IKIGAIボードには、あなた自身の「生きがい」の傾向を可視化する診断機能があります。
所得という一つの物差しではなく、自分がどんなことに幸福や生きがいを感じるタイプなのかを知ることも、この土地の豊かさを実感し直す一つのきっかけになるかもしれません。
ぜひ、あなた自身が感じる「宮崎の豊かさ」についても聞かせてください。一人ひとりの物差しが集まることで、この土地の本当の豊かさが見えてくるはずです。
この記事を読んで、何か感じたことはありましたか?
このシリーズは、宮崎に暮らす一個人事業主が、人権の専門家ではない立場から、皆さんと一緒に学び、考えていくための連載です。
私たちいきがいカフェ協会は、「尊厳教育」「美徳の実践」「生きがいをもつこと」という3つを、人権が尊重される社会をつくるための解決策の核だと考えています。
知識として知るだけでなく、日々の小さな気づきや実践を、同じ思いを持つ人たちと分かち合える場を、宮崎から育てていきたいと思っています。
IKIGAIボードでは、あなた自身の「生きがい」の傾向を知る診断や、同じテーマに関心を持つ人たちとのつながりを用意しています。よろしければ、覗いてみてください。

