真正ラベンダー精油は、シソ科の低木ラベンダーの花穂から水蒸気蒸留で得られる精油です。甘さとハーブらしいすがすがしさをあわせ持つフローラルな香りで、精油の中でも特に広く知られ、最初の1本として選ばれることの多い精油です。
真正ラベンダーの基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 和名 | 真正ラベンダー |
| 英名 | Lavender(True Lavender) |
| 学名 | Lavandula angustifolia |
| 科名 | シソ科 |
| 抽出部位 | 花穂 |
| 抽出方法 | 水蒸気蒸留法 |
| 主な産地 | フランス、ブルガリア、イギリス、日本(北海道) |
| 香りの系統 | フローラル系 |
| ノート | ミドル |
| 主要成分 | 酢酸リナリル、リナロール |
香りの特徴
- 花の甘さと、ハーブらしい青さ・すがすがしさが同居した、やわらかい香りです。
- 香りの強さは中程度で、ほかの精油とも合わせやすいのが特徴です。
- 「ラベンダー」と名のつく精油には、真正ラベンダーのほかに、スパイクラベンダー(L. latifolia)や、両者の交配種であるラバンジン(L. × intermedia)があります。スパイクラベンダーやラバンジンは、樟脳(しょうのう)のようなツンとした香りが強く、真正ラベンダーのほうが甘くまろやかな香りです。購入時は学名で見分けるのが確実です。
- 標高の高い地域で育ったものは、甘さが際立つといわれます。
香りの主成分
真正ラベンダー精油の香りは、主に次の2つの成分でかたちづくられています。
- 酢酸リナリル(linalyl acetate):エステル類に分類される成分で、欧州薬局方の基準では25〜47%。フルーティーで甘い香りをもち、ベルガモットやクラリセージの精油にも多く含まれます。
- リナロール(linalool):モノテルペンアルコール類に分類される成分で、欧州薬局方の基準では20〜45%。花のような軽やかな香りをもち、ローズウッドやホーウッド、コリアンダーなど多くの植物に含まれます。
このほか、酢酸ラバンジュリル、テルピネン-4-オール、β-カリオフィレンなどが少量含まれます。ラバンジンやスパイクラベンダーに多いカンファーや1,8-シネオールは、真正ラベンダーではごく少量にとどまります(欧州薬局方の基準では、カンファーは1.2%以下、1,8-シネオールは2.5%以下)。
リナロールや酢酸リナリルは、空気に触れて酸化すると皮膚感作(アレルギー反応)を起こしやすくなることが知られています。成分の割合は産地や収穫年、標高によって変わります。
主な産地
- フランス:南東部のプロヴァンス地方からアルプス山麓にかけてが伝統的な産地です。標高の高い土地で育つ野生種や在来種から採れる精油は「ラベンダー・ファイン」などと呼ばれ、香料の分野でも高く評価されてきました。
- ブルガリア:近年は世界でも有数の生産量を誇る産地です。フランス産に比べて、ややハーブらしさの強い香りといわれます。
- イギリス:ノーフォーク地方などで古くから栽培され、すっきりとした香りの精油が生産されています。
- 日本(北海道):中富良野町では1952年(昭和27年)にラベンダーの栽培が始まり、香料会社に精油を出荷する香料作物として育てられました。1970年代に入ると、合成香料の技術の進歩や安価な輸入香料に押されて買い取り価格が下がりましたが、その後、ラベンダー畑が観光客を集めるようになり、現在は観光資源としても知られています。国産の精油も生産されています。
歴史と文化
ラベンダーの名前は、ラテン語の「lavare(洗う)」に由来するという説が広く知られています。古代ローマでは入浴や洗濯の水に香りづけとして使われていたと伝えられています。
中世ヨーロッパでは修道院の薬草園で栽培され、香りを楽しむ植物として親しまれました。16世紀以降は「ラベンダー・ウォーター」として香水の原料にも使われるようになります。
20世紀初頭、フランスの化学者ルネ=モーリス・ガットフォセは、実験中のやけどにラベンダー精油を用いた経験をきっかけに精油の研究を進め、1937年に著書『Aromathérapie』を出版しました。「アロマテラピー」という言葉は、ここから広まったとされています。
暮らしでの使い方
- 芳香浴:ディフューザーに1〜3滴。ティッシュやハンカチに1滴たらして枕元や机に置く方法もあります。部屋の広さに合わせて少量から始めます。
- 沐浴:天然塩や植物油(キャリアオイル)に1〜3滴を混ぜてから浴槽に入れます。精油は水に溶けないため、原液をお湯に直接入れないようにします。
- トリートメント:植物油で1%以下(植物油10mlに対して精油2滴まで)に薄めて使います。顔に使う場合は0.5%以下を目安にします。
- 暮らしの香りづけ:無水エタノールと精製水で作るルームスプレーや、衣類をしまう引き出しの香りづけにも使われます。
相性のよい精油
- ベルガモット:同じ酢酸リナリルを含み、柑橘の明るさが加わって軽やかな香りになります。
- ゼラニウム:ローズに似た香りが重なり、より華やかなフローラルになります。
- クラリセージ:甘くハーバルな香りに深みが出ます。
- シダーウッド・アトラス:木の香りが土台になり、落ち着いた印象のブレンドになります。
- スイートオレンジ:甘さが加わり、親しみやすい香りになります。
使うときの注意
- 原液を直接肌につけない、飲まない、目に入れないようにします。
- 子どもやペットの手の届かない場所に保管し、火気の近くで扱わないようにします。
- 3歳未満の乳幼児には、芳香浴以外の方法で使わないようにします。
- 酸化したものは皮膚感作を起こしやすくなるため、開封後はしっかりふたを閉め、冷暗所で保管します。使用期限は開封後1年程度が目安です。
- 妊娠中・授乳中の人、持病のある人、薬を服用している人は、使用前に医師に相談してください。
- 肌に使う前には、薄めたものを腕の内側などに少量塗り、異常が出ないか確認すると安心です。
よくある質問
Q. 真正ラベンダーとラバンジンの違いは?
A. ラバンジンは真正ラベンダーとスパイクラベンダーの交配種で、収油量が多いため価格が手ごろです。香りはカンファーを含むぶん、真正ラベンダーよりもシャープで清涼感があります。ラベルの学名が Lavandula angustifolia であれば真正ラベンダーです。
Q. 「アロマオイル」と精油は同じものですか?
A. 「アロマオイル」という名前の商品には、合成香料や植物油で薄めたものが含まれる場合があります。精油は植物から抽出した100%天然の芳香物質です。購入時は、学名・抽出部位・抽出方法・原産国が表示されているかを確認すると安心です。
Q. 寝室で使ってもいいですか?
A. ディフューザーやティッシュで香りを楽しむ方法が一般的です。香りが強すぎると感じたら滴数を減らし、換気をしながら使ってください。ペット、特に猫がいる部屋では使用を控えます。
参考資料
- Todorova, V. et al.「Comparison between the Chemical Composition of Essential Oil from Commercial Products and Biocultivated Lavandula angustifolia Mill.」International Journal of Analytical Chemistry, 2023, 1997157(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9859693/)
- ファーム富田「ファーム富田の歴史」(https://www.farm-tomita.co.jp/history/)

